新作『幻想神空海』や5月の團菊祭、6月の三部制。歌舞伎座は見どころ満載が続きます
夜の歌舞伎座
『幻想神空海』は、エキゾチックなファンタジー
『幻想神空海』の絵看板
「ここは唐の国。倭国よりの留学僧空海と儒学生の橘逸勢は、ある日訪れた 妓楼で妖物に憑りつかれた男と鉢合わせし、空海は男から憑き物を取り除いてやります。男は、人間の言葉を話す化け猫に憑りつかれたとの事。空海は化け猫のもとへと向かいますが、そこから唐王朝の秘事に係る事件に巻き込まれていきます。事件を追う空海と逸勢は、50年前に楊貴妃が死んだことにつながりがあることをつきとめますが…。」
(歌舞伎座ホームページ: 『幻想神空海』 “みどころ” より一部引用)
物語はいわば、時代が交差するファンタジーストーリー。長安に密教の真髄を「盗みにきた」と豪語する若き日の空海が、その超人的な才で多くの人を魅了し、難題を解決していく冒険譚でもあります。
現代語でわかりやすく、ダイナミックな舞台転換も楽しめる
昼の部の演目の絵看板
『陰陽師』でも主役・晴明役だった染五郎さん演じる空海は、自信に満ちて、生き生きと躍動的。最近大活躍の尾上松也さんも、友をリスペク トする、愛嬌と魅力たっぷりの逸勢役がぴったりです。若手の女形たちの華やかさや、実力派の中堅どころによる演技バトルなど、役者さんたちの奮闘も頼もしい。
舞台上では、エキゾチックな唐の場面が次々に変化していき、幻想的な雰囲気が醸し出されます。歌舞伎座ならではの廻り舞台や、舞台装置が上下する「セリ」の動きなど、見どころが尽きません。
古典はちょっと苦手だけど華やかな歌舞伎に興味がある、照明や色彩の綺麗な現代演劇が好き、という方には、お勧めの演目です。
5月は恒例の團菊祭、6月は三部制。こいつぁ春から縁起がいいわえ
演目は、石川五右衛門の「絶景かな、絶景かな」で知られる『楼門五三桐』、 名科白「こいつぁ春から縁起がいいわえ」を味わえる『三人吉三巴白浪(さん にんきちさともえのしらなみ)』、名作『寺子屋』などの多様なラインナップ。花形・幹部俳優が縦横に出揃った配役にも、期待が高まります。
そして6月は、名作『義経千本桜』が三部制で上演されます。三部制は、増加する外国人観光客や、コンパクトな設定を求める声に対応した試みだそうです。歌舞伎ファンには、「大物浦」で碇綱を身体に結びつけ入水する「碇知盛」を染五郎さん、安徳帝の乳母・典侍局を猿之助さんが演じる配役が、早くも楽しみなことでしょう。
短い時間でも、懐が寂しくても楽しめる幕見席
幕見席の値段は、演目や幕の長さ・内容により異なり、購入には一定のルールがあります。けれども慣れれば初心者にもディープなファンにも、利点の多いシステムです。あらかじめホームページで確認したり、当日歌舞伎座のスタッフに質問すれば、スムーズに購入できることでしょう。
歌舞伎はどんな席からもそれぞれの楽しみ方があり、何度同じ演目を見ても、そのたびごとに新たな発見が可能です。気軽に観劇して、江戸時代から続く芸能の魅力を味わってみましょう。