遂に待望のリニューアルオープン!国立歴史民俗博物館・新第一展示室は迫力満点
ナウマンゾウの復元模型
「新しい古代史観」はより有機的にクリアに。最先端技術の展示物に歴博の底力を見た
続いてナウマンゾウとともに生き、彼らを狩りもしていた氷期日本列島の人々の精巧な再現模型が登場します。黒曜石の鏃を作る父子、毛皮をなめし、動物の骨で作った針で縫製する母子、獲物の鹿を鋭い石鑿でさばく狩猟者など、最先端の模型技術で精緻に再現され、まじまじと見るのもはばかられるようなリアルさです。かつては片掛け毛皮のワンピースをまとった槍を持つ原始人的ビジュアルで表現されることの多かった先史時代の人々は、最新の研究により、粗野ながらも洗練された美意識と技術をもって生活していたこともわかってきて、その研究成果を忠実に再現しています。力のこもった演出に、「原始~古代」を「先史~古代」と看板をかけかえた気概を感じました。
子孫繁栄を願った縄文土器
各種土偶の展示も充実しました。極初期の原初的なビーナス像から屈折土偶と呼ばれる出産の女性を表現した土偶、さらには祭祀物としての日本最大級の大型石棒の実物など、縄文人の生殖と信仰が密接に関係した精神世界を、ユーモラスでどこか哀愁をおびたさまざまなタイプの土偶から明らかにしています。えてして性を深刻にとらえがちな現代と比べて、おおらかな古代の性文化は、現代人が汲み取るべき教訓があるように思います。唯一不可解だったのは、「鳥葬」の展示でした。いかなる弔いなのか、大きな再現パノラマがあるにもかかわらず、具体性が見えてきませんでした。が、神社の門である鳥居とその原型が何であるかを知ることの出来る興味深い展示です。あえて謎めかしているのかもしれません。
残ったものと加わったもの…ネコマニアにはうれしい演出が!
精緻を極めた石器時代の人々の再現模型
飛鳥時代にはじめて歴博が踏み込んだのもトピックです。初お目見えの須弥山石の実物大再現模型が目を引きます。歴博ならではの、謎だらけの飛鳥時代へのアプローチの、今後の深化に期待です。
ネコ好きにうれしいのは、弥生時代の高床式倉庫の復元模型は長崎カラカミ遺跡の高床倉庫の復元模型に刷新され、近年当地の埋葬場から見つかったイエネコの遺骨をもとに、ネズミから穀倉を守る親子のネコのリアルな模型がはしご付近に配されていること。子猫のほうは、零れ落ちた稲穂の端切れにじゃれついているというかわいさ。
刷新された羅城門の復元模型にも、ネズミを追うネコやうたたねしているネコの姿が。弥生時代から律令国家の都まで、ネコが日本の歴史の始まりの頃から稲作集落の中で大切な役割を担い、人と共に生きてきた仲間である、という歴博の明確なメッセージを感じることが出来ます。
「鳴らせる銅鐸」も楽しいアトラクションです。ちょうど中学生の見学集団が来ていたためか、ひっきりなしに鳴らされていましたが、重々しい寺院の鐘の音ではなく、西洋の教会の鐘にも似た空に抜けるような明るい音色は、当時の日本人の精神性が今とはかなり違っていたことも感覚として理解できます。
開館当時から第一展示室の独立コーナーとして展示スペースが設けられ、後に世界遺産登録された「正倉院」と「沖ノ島」はより充実が図られ、各種正倉院文書(撮影不可)や沖ノ島祭祀遺物の展示はより充実しました。筆者が好きなパノラマ展示の一つ、「沖ノ島磐座分布模型」が削られずに残されたのはうれしく思います。
本物の「江戸」が生きている佐倉の町を歩く
佐倉の総鎮守・麻賀多神社境内に咲いていた牡丹
歴博では、GW中の5月3日(金)、研究員による第一展示室のギャラリートーク(入館料以外無料)が館内で開催されます。AM10:00より「最終氷期に生きた人々」、AM10:55より「正倉院文書複製の特別公開」、PM13:00より「多様な縄文列島」、PM13:55より「水田稲作のはじまり」。興味のあるテーマにあわせて、訪館してみてはいかがでしょうか。
なお、第二~第六展示室については、こちらもご参照ください。
https://tenki.jp/suppl/kous4/2018/10/26/28543.html
国立歴史民俗博物館第一展示室 先史~古代
ひよどり坂