新緑の季節・害虫たちもお目覚めの季節です
アレをやっつけてくれるんならありがたいがご本人たちもたいがいな面々
これらの虫は、小型でもハエや毒蛾などを食べてくれますので、いずれにしても益虫なのですが、問題はこれらの虫自体が恐怖の対象だということですよね。
かといって屋内までツバメやトンボは捕食しに来てはくれませんし、庭にもあまり来ないでしょう。
あまり知られていませんが、人間のごく身近で、ゴキブリを含む害虫を食べてくれる生き物がいます。これから活動が活発になるヤモリ(ニホンヤモリ)です。
超絶キュートなハンター・ヤモリ、知られざる生態とは
日本には島嶼などを含んで2科7属13種のヤモリの仲間が生息しています。そのうち最もポピュラーに見られるのがニホンヤモリ。福島県以南の本州(山形県の一部など東北北部でも一部で生息)、四国、九州、および朝鮮半島南部、中国東部にも生息しています。世界には約670種が知られ、温帯から熱帯にかけて広く分布していますが、寒い地方にはいません。日本でも北海道では見られない、蛇やトカゲ・亀など他の爬虫類よりも寒さに弱く、より熱帯に適応した種類です。体長は成熟した個体で体長12~14センチ、体長の半分を尾が占めます。体色は灰褐色で暗色の不鮮明な斑紋がわずかにあります。目は大きく、ヘビと同様まぶたがなく、透明な鱗で保護されています。
一説では、江戸時代以前に船の積み荷に交じって日本に侵入した帰化動物だろうと考えられていますが、平安時代の書物「堤中納言物語(つつみちゅうなごんものがたり)」書中「蟲愛づる姫君」にも記載があることから、繁殖してから長い期間が経ち、日本の風土になじみ適応した在来種と言ってもさしつかえないでしょう。
人家など人の近くに通年好んで棲み、冬眠も人家の建物の隙間などで行ないます。
ところでヤモリとイモリの区別がつかない、という人がことのほか多いとか。名前自体が似ていて、サイズも同じくらい、調査によると半分以上の人はヤモリとイモリの区別がつかなかったり混同したりしているそうです。
でもこれは致し方ないことで、民俗学者南方熊楠によると、古来日本人はトカゲ、ヤモリ、イモリの区別をつけず、同一視していたのだといいます。これは日本だけではなく古代中国も同じだったようです。熊楠は中国で蜥蜴(トカゲ)とヤモリ(守宮)が混同され、さらにイモリを加えてこの三者はほとんど区別されていなかったと解釈しています。
かつては色町などではイモリの黒焼きが精力薬として珍重されていたそうですが、これも本来はヤモリだったのがいつしかイモリに代わってしまったと日本ではいわれていますが、ヤモリは少産ですし、あまり精力がつくとは思えないので、本来中国ではイモリだったのではないでしょうか。昔の人ですらそうなのですから、現代人がわからないのも無理はないかもしれませんね。
ヤモリはトカゲやヘビと同じ爬虫類で地上の外壁などにいる。イモリはカエルやサンショウウオ、ウーパールーパーと同じ両生類で池や泉などの水の中に棲む、と覚えていただければ、混同はしないと思います。
肌触りは求肥(ぎゅうひ)・庇護心をくすぐる最弱の野生動物・ヤモリはどうして絶滅しないのか
このように攻撃力も防御力も弱い生き物は多くの場合大量に卵を産んで子孫を量産する戦略を取りますが、ヤモリの場合一年に2~3回、二つずつしか産卵せず、繁殖力もさほど優れてはいません。また、身を守るすべとしてつきものの毒もありません。こんなにあらゆる面で生き残り能力・戦略に欠けている動物は他に見たことがありません。あまりに無防備で、思わず守ってやりたい気持ちにかられます。まさに最弱の名にふさわしい生き物と言えます。獲物である虫を捕まえることすら偶然以外におぼつかないのではないか、と心配になってしまいます。
筆者が観察していると、まるで虫がヤモリに引き寄せられるように食べられていきました。一体どういう仕掛けなのか、何かしら誘引する仕掛けがあるのかもしれません。
実はこのヤモリ、近年ようやく研究が進んできましたが、さまざまな血用能力の持ち主であるとわかってきています。虫をおびき寄せる方法についても、いずれ解明されることがあるかもしれません。