明日9月23日は万年筆の日!手書きの楽しさを再発見してみませんか?
9月23日は「万年筆の日」。万年筆の歴史と魅了をご紹介します
さて、明日9月23日は「万年筆の日」なのですが、今からおよそ200年以上前、英国で万年筆の元となったペンが発明されたことにちなんで制定されました。そこで今回は、万年筆の魅力についてご紹介したいと思います。
メモはもちろん案内状や連絡についてもパソコンやスマートフォンを活用する人が多い中、みなさんが最後に自筆で手紙を書いたのはいつでしょうか? そんないま、手書きで文章をしたためることが、少しずつながら見直されているようなのです。
“泉のよう”にインクが出る? 初期の万年筆とは
万年筆は今から約200年前、イギリスで発明されたペンが始まりといわれています
同じく1809年に英国人のジョセフ・ブラマーも、ペンの中にインクを入れ、軸を押すことでペン先からインクを出す仕組みを考案します。このときは“泉のよう”にインクが出るということから、「泉のペン(fountain pen)」と名づけられたといいます。それにしても“泉のよう”にとは、どれぼとの量のインクが出たのか気になりますね。
大切な契約書をインクで汚したしまった失敗から誕生した万年筆
契約書を汚してしまった失敗から、今日の万年筆が誕生
これらの問題を解決したのが、米国人のルイス・エドソン・ウォーターマンです。
このウォーターマンは保険のセールスマンだったのですが、契約書を交わす際に書類をインクで汚したしまったために顧客を失った経験を持ちます。この時の経験をもとにウォーターマンは、軸の中にインクを貯蔵できる筆記具が開発されてから75年後の1884年、“毛細管現象”(内側の液体が管の中を上昇または下降する物理現象)を利用して、ペン先にインクを送る仕組みを発明します。
この仕組みは今日の万年筆にも用いられており、ウォーターマンは「近代万年筆の父」とも呼ばれています。
ところで、万年筆という名前は誰がつけたの?
万年筆。明治時代の末までは「萬年筆」と書いて「まんねんふで」と読んだ?
このとき万年筆が輸入されたのは開港(1859年)間もない貿易港・横浜であり、貿易業者・バンダイン商会が1884年に米国製「カウス・スタイログラフィックペン」を輸入したことがわかっています。しかし、実際のところは今日の万年筆の仕様とは大きく異なり、万年筆の前身といわれる筆記具だったようです。
また「万年筆」という名称は、1885年に「丸善」のチラシに登場したのが初めとされていますが、万年筆の名づけ親については次の2説がいまに伝わっています。
【一説】国産の万年筆を作った時計商・大野徳三郎が「万年筆」と名づけたことが、1905年10月の東京横浜新聞で報じられている……
【一説】一方で、明治の評論家兼文学者の内田魯庵が、懇意にしていた筆記具販売員の「万吉」さんの名前と、インクを補充さえすれば千年、万年かける筆であるから「万年筆」と名づけた……
いずれにしても、墨(すみ)や硯(すずり)を用意しなくても、いつまでも書き続けられる、そんな夢のようなペンに対する思いが込められていたのかもしれません。ちなみに、明治時代も末ころまでは「萬年筆」と書いて「まんねんふで」と読んだともいわれています。
使えば使うほど書きやすくなる。万年筆の魅力
使い込むことでなじんでくるのも、万年筆の大きな魅力
逆に、万年筆の大きな魅力のひとつに、書けば書くほど書きやすくなるという点があります。
その理由として考えられるのが、ペン先です。万年筆のペン先の先端には硬い合金がついていて、これが紙の上をなめらかにすべることで字を書くことができます。このペン先を日々使い続けることで合金部分に磨きがかかり、持ち主のペンを握る角度や筆圧、書き方のくせなどになじんでいくのです。
万年筆愛用者の中には、その書き味の変化で自分の万年筆を誰かほかの人が使ったことが分かる、という人もいるほどですので、それほどに繊細に、万年筆は持ち主仕様にカスタマイズされていくということなのでしょう。
万年筆の選び方。3つのポイント
交換も手軽にできるカートリッジ式のインク
【選び方のポイント1】
まず、書き味を決めるペン先には、金とスチールの2種類の素材があり、金は腐食にも強く、弾力性がありますが、高価です。一方のスチール製は価格はそれほど高くはありませんが、硬くて、さびる可能性があります。
【選び方のポイント2】
次に、ペン先の形状で自幅も変化します。あて名書きやサインなどに使う太いものから、手帳などに記す極細タイプまでさまざまですが、厳密な規格はありません。購入する前には必ず試し書きをすることをおすすめします。
【選び方のポイント3】
最後はインクの補充方法です。補充方法は3種類あり「インクをペンに吸入する」「カートリッジ式」「そしてその両方に対応するコンバーター式」となります。それぞれ一長一短ありますが、万年筆の愛好家には、インク交換の手間を楽しみたいという人も多いようです。
さらに、万年筆のインクの色といえば「ブラック」か「ブルーブラック」が主流でしたが、最近のステーショナリーブームを受けてか、筆記具専門店ではまさに色とりどりのインクが販売されています。そうしたインク選びも万年筆愛好者の楽しみのひとつとなっているようです。
参考:『万年筆のすべて』(枻出版社)、日本筆記具工業会HP