お正月の準備に欠かせない! お餅のあれこれ
お餅は年神様に捧げる、お正月には欠かせない神聖な食べ物
ところで、お正月といえば鏡餅やお雑煮など、一年でも最もお餅を食べる機会が増える時期ではないでしょうか。
お餅は古くから神様に捧げる神聖な食べ物でしたが、かつてはお年玉もお餅だったというくらい、お正月とは切っても切れないものでした。そこで今回は、お正月のお餅にまつわるあれこれをご紹介します。
お正月にお餅を食べるようになったのはいつから?
「歯固め」にはかたい物を食べて健康と長寿を願う意味も?
宮中で行われた「歯固めの儀」という行事でお餅を食べたといわれています。一年の始まりの日にかたい物を食べることで、歯の根をしっかりと固めて健康と長寿を願うことから、大根や押し鮎、鹿の肉なども食べられていたようです。
ここでいう「歯」には「齢(よわい)」という意味もあるそうですが、確かに、まだ歯の生えそろわない赤ちゃんが口にくわえて遊ぶのも「歯固め」といわれますし、また年齢が高くなると、歯の状態が健康にも大きく影響してきます。
お餅をついてはいけない日がある?
年末にはお餅をついてはいけない日が……
昔はそれぞれの家庭で用意するのが一般的でしたが、都市部などでは、餅つきを代行してくれるサービスもあったそうです。餅つきの道具を一式もって家々をまわり、注文があるとその家の前でお餅をついてくれました。
ところで、年末にはお餅をついてはいけない日があります。
12月29日につく餅は「クニチモチ」、または「クンチモチ」といって、「苦に通じる」といわれています。
また、大晦日(おおみそか)、31日につくことは「一夜飾り」「一夜餅」といわれて、この2日はお餅をつくものではないと考えられていました。
しかし地域によっては「29」を「フク」と読んで、かえって「縁起がいい」といわれることもあるようですが、今年は後半になってから、衛生上の問題から「餅つきを廃止」する……といったニュースが全国を駆けめぐりましたね。
「伝統」か、「「衛生」か……。議論の分かれるところですが、みなさんの周囲ではどのような判断が取られたでしょうか。
鏡餅はどうして「鏡」?
年神の依代ともいわれる鏡餅
鏡餅という呼び名の由来については諸説あります。
丸い形が昔の鏡に似ているから。また自分を映して鑑(かんが)みることから、鏡餅となったという説もあります。
鏡は古くから、神様が宿る依代(よりしろ)といわれていて、鏡餅はただのお供えという意味だけでなく、鏡餅そのものが年神様のご神体という考え方もあるようです。
そのほか、独特の丸い形にも、「人の心」や「心臓の形」、「円満」を意味している、「(二段になった餅が)太陽と月」を表しているなど、さまざまな「いわれ」があります。
関東の切り餅、関西の丸餅
関東では四角い切り餅が一般的
東日本では、のし餅といって、お餅を板状に薄くのばした(のした)ものが一般的です。
平らに伸ばしたお餅が、包丁で切りやすいようにある程度固まってから、食べやすい大きさに切りました。
一方、西日本では、お餅を食べやすい大きさに丸めた丸餅が多いようです。
このほか、餡を入れて丸めたり、雑穀を混ぜたり、大豆や海苔、みそなどを加えるなど、お正月用のお餅にも、それぞれの地域によっていろいろな種類があります。
お年玉もお餅だった?
お年玉もかつてはお餅だった
でも、昔はこのお年玉もお金ではなく、お餅でした。年長者、家長など目上の人が、神様にお供えした縁起物のお餅を分け与えていました。
お年玉という呼称の由来をみると、「たま」には魂という意味があり、年神様へのお供え物が下げられたものということから「としだま」としたという説があります。神様にお供えしたものには霊力が宿るとされていて、それを食べることで神様の力を体内に取り込んで、新しい年を迎えるという意味合いです。
また、「年の賜物(たまもの)」ということから「としだま」というようになったという説もあります。
── 稲作をして生活してきた日本人にとって、お餅は特別な日に食べる縁起のよい食材としてだけでなく、日々の暮らしの中でもお餅を使ったレシピはたくさんあります。
最近ではその栄養価が高さも評価されるなど、特別な食べ物ですね。
参考:『日本人の祝いと祀りのしきたり』(青春出版社)、『春夏秋冬を楽しむ くらし歳時記』(成美堂出版)、『知っておきたい日本の年中行事事典』(吉川弘文館)
ホームページ:日本鏡餅組合、全国餅工業協同組合、全国包装鏡餅協議会