北陸 まもなく大雨の季節到来 梅雨入りの速報発表の有無にかかわらず万全な備えを
梅雨は自然界における季節現象であり「人間は自然の一部」 人間が自然現象に予報段階で線引きをするのは難しい側面がある
「梅雨入り=梅雨前線に伴う降水が始まる」という定義ではありません。
実際の降水現象は、梅雨の期間であっても低気圧や気圧の谷、台風や熱帯低気圧、寒冷前線や温暖前線、上空の寒気に伴う不安定性の降水現象など様々あり、複合的要因で降水がもたらされるケースが多くあります。このため、梅雨前線に伴う降水域が該当エリアにかからなくても梅雨入りの速報が発表されるケースはあります。
9月には春から夏にかけての天候経過を改めて振り返り、梅雨入りと明けの時季を確定させる作業を行い、これを「確定値」として発表しています。
近年の北陸地方では2008年や2012年、2013年、2015年のように、9月の確定値発表時に「実はあの時まだ梅雨は明けていなかった」という事例が複数確認されています。そこには自然の一部である人間が予報段階で自然現象に線引きをする難しさがあります。
梅雨入りや梅雨明けの判断を難しくする北陸としてのもう一つの要因

季節の歩みは、人間が線引きした地方単位で都合良く進むとは限りません。
日本地図を俯瞰すると、福井県の特に嶺南はほとんど近畿(関西)、新潟県の下越はほとんど東北と言っても過言ではない地理的な立地となっています。このため、時には難しい判断を迫られる局面があることが予想されます。もし仮に県別に梅雨入りや明けを検討する場合には、福井と新潟で異なる日付になることもありそうですが、ここで、梅雨入り速報発表の目的の第一義は、あくまでも大雨の季節に入ることへの注意喚起です。
季節は行きつ戻りつ、ゆっくりですが確実に進んでいきます。日付だけで独り歩きしないことが重要と思われます。
北陸の梅雨のデータバンク

そこで、年ごとの梅雨を同じ基準で比較できるように、梅雨の日数や降水観測日を考慮した平均日降水量を2021年までの過去50年について調べました。
その結果、降水観測日の平均日降水量が最も多いのは2017年の金沢で37.7mmとなりました。4都市の上位3位以内を確認すると、2000年以降の近年の記録が多く、6月~8月の夏の期間にエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の年が多い傾向です。
また、日照が少ないランキングに関して、日中の時間帯(9時~18時)の80%である7.2時間超えを観測した日数を調べました。その結果、4都市ともに最も少ない記録は2日で1986年や2003年、2005年が該当していました。前項の降水量と同様に4都市の上位3位以内を確認すると、こちらも6月~8月の夏の期間にエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の年が多い傾向でした。
ラニーニャ現象が続く中での北陸の梅雨は?
梅雨明けに関してはどうでしょう? 過去に梅雨の期間が1か月以内と比較的短かった6シーズンの1978年、2001年、2005年、2011年、2018年、2021年を調べました。その結果2005年以外は「春までラニーニャ現象が発生していた」「ラニーニャ現象に移行するステージである」などとなっており「ラニーニャ的」であったとも解釈もできる状況でした。このことから、梅雨入り後は季節は順調に進み、梅雨の期間としては平年並みか短くなる可能性もあります。
昨年2021年は、北陸西部である福井・石川・富山では、5月の梅雨のはしりの方が梅雨本番よりも梅雨らしく感じられ梅雨末期のような様相となりました。梅雨明け速報発表後の8月のお盆のころには北陸東部である新潟を含む北陸全域で一週間以上にわたり天気がぐずついて広く大雨となりました。これから台風シーズンが終わるごろまでは最新の気象情報に注意して大雨への備えを万全にするようにして下さい。